1990年に大阪のコマーシャルスタジオのアシスタンをやめてフリーカメラマンとして雑誌と広告の仕事をやっていこうと独立した私ですが、しばらくは雑誌の撮影だけやってました。大型カメラや大型ストロボを持っていないとコマーシャルの撮影は出来ないものという先入観にとらわれていたんだと思います。高校生の時に全盛期の雑誌『POPEYE』やアウトドア雑誌の『Outdoor』からいっぱい夢をもらったから、そういう雑誌の撮影もやりたかったのです。今でも時々、雑誌の撮影をやっていてページを創る感覚が好きです。雑誌撮影で見開きの2Pから数ページを全部自分の撮影になる時に心がけてることを今日は『プロカメラマンの技』として紹介してみます。一番解りやすいと思うので見開き2ページの仕事のケースで。
雑誌で企画が決まり担当編集者から撮影依頼の連絡があってスケジュールが空いていて受諾すると、その企画ページの意図と編集者としてどんなページを創りたいかお聞きします。そしてその意図と時代の空気感を考えながら自分の持つ撮影手法としてどういう方法を使ってページの写真ビジュアルを創るかイメージします。実際に撮影に行った時に気をつけるのは、例えば料理写真ではアングル(高さとか角度とか縦横とか)などが同じ写真が並んで単調にならないように「あそこでは料理写真はこう撮ったからここではこう撮ろう」と考えながら撮影します。見開きページで写真のトーンが揃うように色味なども統一感がでるように考えます。下の見本の写真ではライティング用のストロボを持参してましたが、いけそうだったので全部自然光で撮影しました。撮影しながらメインビジュアルや大きくなるイメージカットを撮れるとこでページを想像しながら撮っていきます。このページのケースでは「核になる店の『パリの食堂』に一番に取材してイメージしたい」と編集者兼ライターさんが行ったので、私もそこで核になるイメージカットを撮影しました。(それでも全店でメインビジュアルのイメージカットは候補として撮ります)。私は取材撮影中に頭のなかで見開きの写真だけでのデザインレイアウトは創ります。デザイナーさんとは話をしませんでしたが、この仕事では実際のページのレイアウトが頭のなかでしていたイメージのままでした。
編集者兼ライターとイメージを共有して1+1+1=3以上のものを創るのが雑誌撮影の醍醐味だと思います。この仕事を一緒にした編集者さんとは2号連続で読者人気投票1位がとれたりしました。ちなみにこの仕事をした時は新人編集者でしたが、今は有名雑誌の編集長になっておられます。
<1996年頃に撮影して読者人気投票1位になった月刊誌の見開き2ページ>